避難訓練の合言葉「おはしもち」とは?追加された理由と最新防災ルール
小学校や幼稚園・保育園の避難訓練で、一度は耳にしたことがある防災標語。かつて昭和から平成初期にかけて定番だった「おはし」や「おはしも」ですが、現在は「おはしもち」へと進化していることをご存知でしょうか。
地震や火災といった不測の事態において、パニックを防ぎ命を守る行動を瞬時にとるための大切な合言葉。なぜ文字が増え、どのような教訓が込められているのか。本稿では、教育現場や家庭で役立つ最新の防災知識とともに、各文字の具体的な意味や教え方のポイントを分かりやすく紐解きます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:「おはしもち」は「押さない・走らない・喋らない・戻らない・近づかない」の頭文字をとった避難行動の原則。
- 要点2:大震災の教訓から二次災害を防ぐため、従来の「おはし(も)」に「も(戻らない)」「ち(近づかない)」が追加された。
- 要点3:保育園向け「おかしもち」など年齢に合わせたバリエーションがあり、家庭内での事前共有が減災の鍵を握る。
【基本解説】避難訓練の合言葉「おはしもち」の意味と5つの約束
教育現場や地域の防災訓練で広く使われている「おはしもち」は、集団避難時に発生しやすい事故や二次災害を防ぐための行動規範をまとめた防災標語です。それぞれの文字には、子どもの命を確実に守るための具体的な行動基準が設定されています。
各フレーズが持つ意味と、なぜその行動が求められるのかを整理しました。
【お】押さない(おさない)
避難経路や階段で前の人を押すと、将棋倒しなど重大な群衆事故につながります。集団パニックを防ぎ、全員が安全に移動するための最優先ルールです。
【は】走らない(はしらない)
焦って走ると転倒のリスクが高まります。特に地震直後はガラスの破片や散乱した障害物が多く、転倒による負傷が避難の遅れを招くため、早歩きで落ち着いて行動することが求められます。
【し】喋らない(しゃべらない)
私語を交わしていると、先生や防災無線の指示、周囲の危険を知らせる音が聞き取れません。正確な情報伝達を妨げないための規律です。
【も】戻らない(もどらない)
忘れ物やペットの様子が気になって建物や教室へ戻る行為は極めて危険です。火災の煙に巻き込まれたり、強い余震による建物の倒壊に巻き込まれたりする恐れがあります。
【ち】近づかない(ちかづかない)
倒壊の危険があるブロック塀、垂れ下がった電線、割れそうな窓ガラス、火災現場など、危険箇所には絶対に接近してはいけません。
「おはし」「おはしも」との違いは?「も・ち」が追加された決定的な背景
世代によって覚えているフレーズには違いがあります。1980年代頃までは「お・は・し(押さない・走らない・喋らない)」が主流でした。その後、1995年の阪神・淡路大震災を機に、忘れ物を取りに戻って犠牲になる事例が多数報告されたことから「も(戻らない)」が加わり、「おはしも」が定着しました。
さらに2011年の東日本大震災以降、余震による建物の崩落やブロック塀の倒壊、津波や沿岸部・河川への接近による被災リスクが再認識され、「ち(近づかない)」を加えた「おはしもち」へと進化を遂げました。
危険な現場から離れること、そして一度安全な場所へ脱出したら絶対に逆戻りしないこと。過去の大規模災害で得られた尊い教訓が、この短い合言葉に凝縮されています。
保育園や幼稚園では「おかしもち」?年齢に応じたバリエーション
避難訓練の合言葉は、対象となる子どもの年齢や発達段階に合わせて最適な言葉選びがなされています。
保育園や幼稚園では、「走らない」という表現を幼児にも直感的に伝わりやすい「駆けない(かけない)」に置き換えた「おかしもち(押さない・駆けない・喋らない・戻らない・近づかない)」が多く採用されています。幼児期の子どもにとっては「はしらない」よりも「かけっこしない=かけない」のほうが行動をイメージしやすいためです。
また、一部の地域や学校現場では「て(低学年を優先する / 手をあげる / 適切な判断をとる)」を加えた「おはしもて」といったアレンジも存在します。どの標語であっても、根底にあるのは「パニックを抑え、安全な避難ルートを確保する」という共通の目的に他なりません。
学校・家庭で役立つ防災教育の指導案|ポスターやイラストを活用した教え方
学校や園の指導案作成において重要なのは、単に言葉を暗記させるのではなく「なぜその行動をとるべきなのか」を視覚的・体感的に理解させる点にあります。
文字情報だけではピンとこない未就学児や小学校低学年に対しては、避難訓練ポスターやイラストを用いた指導が極めて効果的です。「煙が充満した部屋に戻るとどうなるか」「倒れそうな塀に近づくとどんな危険があるか」をイラストで見せることで、子どもの危機管理意識は格段に高まります。
家庭内での防災会議でも、次のようなステップで話し合うのがおすすめです。
・家の近所で「近づいてはいけない場所(古いブロック塀、急な傾斜地、狭い路地)」を親子で歩いて確認する
・地震発生時、家族の集合場所を決めて「途中で引き返さない」約束を共有する
・冷蔵庫や玄関ドアに「おはしもち」のイラストメモを貼り、日頃から目に触れさせる
【2026年最新】災害対策の現場事情|合言葉だけに頼らない命を守る行動指針
現在の防災教育において重視されているのは、合言葉の遵守にとどまらない「状況判断力」の育成です。マニュアル通りの行動だけでは対応しきれない複雑な複合災害が増加しているためです。
例えば、火災が発生している場合は煙を吸わないよう姿勢を低くしてハンカチで口元を覆う必要がありますし、津波警報発令時には「走らない」ことよりも「高台へ一刻も早く全力で避難する」ことが最優先されるケースもあります。
合言葉を基本のブレーキとして機能させつつ、周囲の異変に気づいて自ら命を守る選択ができるよう、臨機応変な訓練設計が全国の教育現場で進められています。
【おはしもち】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:「おはしもち」の「ち」の意味は何ですか?
A1:「ち」は「近づかない」を意味します。地震で亀裂が入った建物、倒れそうなブロック塀、切れた電線、火災現場や川の増水箇所など、危険が潜む場所に接近して二次被害に遭うのを防ぐための約束です。
Q2:「おはしもち」はいつから使われるようになったのですか?
A2:2000年代中頃から一部消防署などで提唱されていましたが、全国的に広く定着したのは東日本大震災(2011年)以降です。大地震後の津波や余震による倒壊リスクが広く認知されたことで、従来の「おはしも」に「ち」が加わりました。
Q3:大人の避難時にも「おはしもち」は適用されますか?
A3:十分に適用されます。オフィスビルや商業施設での火災・地震時にも、群衆事故(押さない・走らない)や情報途絶(喋らない)、貴重品回収のための再進入(戻らない)、落下物リスクのある場所への滞在(近づかない)を防ぐための共通原則として極めて重要です。
まとめ:家族で共有したい「命を守る合言葉」の実践
「おはしもち」は、幾多の災害から得られた貴重な教訓をもとに練り上げられた、命を守るためのエッセンスです。幼い子どもだけでなく、大人が非常時の行動を見つめ直す上でも確固たる指針となります。
学校や園での指導に任せるだけでなく、ぜひご家庭でも「我が家の避難の約束」として話題に上げ、いざという時に迷わず動ける準備を整えておきましょう。 (出典: お は し もち(Yahoo!ニュース))